建築の街バッファロー

バッファローというとナイアガラの滝ばかりが有名ですが、実は、エリー・カナル(Erie Canal)が開通した1825年以降から20世紀初頭の、優れたアメリカ建築を堪能できる街である、ということはあまり知られていません。

エリー・カナルの開通と、シカゴとニューヨークの中間に位置するという地理的な強みにより、当時、バッファロー経済は隆盛を誇っていました。東海岸やシカゴで活動していた著名な建築家たちがそうしたバッファローの活気にひかれ、この街を舞台に、新しい建築スタイルを取り入れた実験的な建物や都市デザインを試みたのです。主な建築家としては以下の名前があげられます。

フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright):

アメリカ中西部に広がる平坦な大草原のイメージをもとに、「自然と人間の協調」を目指した住宅デザイン、「プレイリー住宅」(Prairie House)を発案したことで有名です。シカゴが活動拠点でしたが、ライトはバッファローにあったLarkin Soap Companyの重役、ダーウィン・D・マーティン(Darwin D. Martin)と親しかったため、バッファローにはライトがデザインした建築物がいくつか残っています。

Frank Lloy Wright: Architect Biography

Frank Lloyd Wright Foundation

ルイス・サリヴァン(Louis Sullivan):

「モダン建築の父」と呼ばれ、ライトが師としてあおいだ建築家。建築パートナーだったダンクマー・アドラー(Dankmar Adler)と共同でデザインしたビル(Guaranty Building)がバッファローに残っています。当時量産され始めた鉄骨を建築に取り入れ、高層ビル時代の礎を築いたほか、「form ever follows function」と発言して、機能重視のビル建築を提唱したことでも知られます。

Louis Henri Sullivan: Architect Biography

Buffalo as an Architectural Museum: Louis Sullivan

ヘンリー・ホブソン・リチャードソン(Henry Hobson Richardson):

1860年代にパリに留学。帰国後、ゴシック様式をベースとした重厚な建築デザインに、彼独自のアイデアを取り入れた建築様式を発案し、「Richardson Romanesque」と呼ばれる建築分野を確立しました。バッファローにも、「Richardson Romanesque」の建築物がいくつか残っています。

Henry Hobson Richardson: Architect Biography

フレデリック・ロー・オルムステッド(Frederick Law Olmsted):

オルムステッドは、Landscape Architecture(自然や景観を考えた都市づくりや建築)の先駆者。ニューヨーク・シティのセントラル・パーク(Central Park)をデザインしたことで知られます。「階級に関係なくすべての人が足を踏み入れ、楽しめる公園」という、当時は一般的でなかったアイデアは、すべての人の平等を信じた社会改革者としての彼の側面も表しています。バッファローには、オルムステッドがデザインした複数の公園と、それらをつなぐ並木道(Buffalo Park System:アメリカで最初のパーク・システム)が残っています。

Buffalo Olmsted Parks Conservancy

バッファローには他にも、World Trade CenterをデザインしたMinoru Yamasaki氏デザインによるビル(M&T Building)をはじめ、著名な建築家のデザインによるビルや美しい公園、歴史を感じさせる住宅や並木道が残っています。また、そうした建築物やエリアを将来に残そうという市民の活動も活発に行われています。バッファローの街を歩く際には、建築物を見上げたり、公園や並木道を散策して、アメリカの「建築の歴史」、「街づくり」の歴史も楽しんでください。

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